仮面ライダークウガの最終回・笑顔を守るために戦った青年の最後とは?

『世界一不思議な特撮』または『人に優しくなれるドラマ』などと著名人から評される異質な特撮、仮面ライダークウガ。

暑苦しくない主人公。残酷かつ残忍、得体のしれない恐ろしい敵。難解かつ秀逸に練りこまれたストーリーなど、当時既に定着しつつあった正義のヒーローの在り方、わざとらしすぎる特撮ヒーロー像を根本から覆し、撤廃した平成ライダーの初作である。

ドラマ史上に堂々とその名を刻んだ仮面ライダークウガであるが、あなたはこの作品の最終話をご存じだろうか?

人を守るために、たった一人で戦い続けた青年の最後……ここでは最終話の内容をかいつまんで解説すると同時に、その意味などを深く考察してみようと思う。

仮面ライダークウガの主人公、『五代雄介』とはどんな人物?

 

世界をまたにかける24歳の冒険家。

幼いころに父親、18歳の頃に母親を亡くし、妹と二人家族。

2000個の様々な技(特技)を持っており、好奇心旺盛で明るい青年。

一見お調子者に見えるが、その本質は誰よりも人の笑顔を大切にする、心優しい人物である。

トレード―マークは顎のほくろとサムズアップ。

座右の銘は、『自分にできる限りの無理をする』

古代遺跡から見つかったベルト状の物質、『アークル』を腰に巻いてしまったことで戦士、クウガへの変身能力を得てしまう。

本来ならば暴力を誰よりも嫌う彼だが、自分が戦う力を得てしまったことで自身の気持ちを抑え、拳を振るって人々を守ることを決意する。

正義のためではなく、ただみんなに笑顔でいてほしい、それだけを願って。

暴力で分かり合うことを良しとしない青年が、暴力で一方的に解決を試みるヒーローの責務を背負ってしまう。

この矛盾が本作のテーマのひとつであり、五代雄介の心を最後まで傷つけていきます。

ちなみに、俳優はオダギリジョーさん。

あまりに悲しく壮絶な、クウガの最終回とは?

 

クウガの最終話と言われている内容は、正確には最終話の一つ前の48話『空我』。

後述の理由から、最終話の49話『雄介』はどちらかというと後日談に近い内容になっている。

まずは実質的な最終話である48話、その一つ前の47話『決意』のあらすじをかいつまんで解説しよう。(その後続けて最終話も解説します)

厄災の元凶、「ン・ダグバ・ゼバ」へと挑む、クウガ、五代雄介。

しかし、その圧倒的な力を前に為すすべもなく、命からがら撤退することを余儀なくされた。

ダグバによって無残に消されていく人々の姿や悲鳴を背にして……。

もはや一刻の猶予も無ければ、ダグバを倒す方法は一つしかない。

五代雄介はダグバを倒すために、古代文書に書かれていた『なってはならない究極の戦士』に自らなることを決意。

憎しみの力に支配された、暴力の象徴、慈愛の欠片も何もない、ただ相手を倒すためだけの究極の存在へと。

彼は無事では済まないことを自然と悟ったのか、ダグバとの戦いに敗れた翌日。

雨が降り、風が吹きすさぶ嵐の中、これまでお世話になった人たちのもとを訪れ、笑顔でこう言い残します。

「戦いが終わったら、旅に出ようと思います」

この言葉の本当の意味を察した者も、そのまま鵜吞みにしたものも、みんな彼を見送ります。

ある者は涙を流し。またある者は彼を信じて。また、ある者は、その時やっと彼がクウガだったことを知り、呆然と佇んで……。

五代の戦友、『一条 薫』刑事より連絡が入った。

ダグバの待ち受ける場所は、九郎ヶ岳遺跡。

そう、全ての始まりにして、クウガのベルトが掘り出された場所だ。

始まりの場所で、1対1の最後の決戦。

一条と共にバイクに跨り、九郎ヶ岳遺跡へとむかう五代。

昨日の雨の残痕を残すかのように、遺跡には猛吹雪が吹き荒れる。

遺跡に着くと、一条刑事は五代に頭を下げた。

「すまない……こんなことに巻き込んでしまって。君には、冒険だけしていてほしかった」

五代は笑顔で、こう返します。

「ありがとうございました。俺、クウガになって良かったって思ってます。だって……一条さんに会えたから」

どちらともなく、サムズアップを交わす二人。

「じゃあ見ててください……俺の、変身」

彼の変身ポーズと共に、ベルトのアークルが光りだす。

禁忌の戦士、憎しみのアルティメットクウガ。

全身が黒く覆われ、その姿は正に破壊の象徴ともいえる戦士だった。

だが、一条は見逃さなかった。

ただ一点だけ、古代文書の伝説とは異なる部分があった。

複眼……クウガの目は、赤いままだった。

変身した五代は、そのまま吹雪の中へと姿を消します。

待ち受けるダグバ。

クウガとは対照的に、白く美しい姿をした、黄金の戦士。

しかし、それもそのはずである。

なぜなら、ダグバは暴力に対して幸福を抱いているからだ。

彼は自身と同じ存在である憎しみのクウガと戦えることに、幸福感を感じているのだ。

憎しみとは正反対の、幸せという感情。

暴力という戦いに挑む互いの力は、正に白と黒。

心の内は、全くもって正反対のはずなのに。

戦いが、始まる。

互いに譲らない、拳の打ち合い。

だが、クロスカウンターと同時に、お互いのベルトが砕け、ダグバも五代も人間態へと戻ってしまいます。

もうそこに、正義のヒーローの姿などどこにもなかった。

人間同士で殴り合う、二人。

血しぶきが飛び交う中、五代は涙を流し、ダグバは笑顔を浮かべ。

赤いままだったクウガの目は、憎しみを抱きながらも悲しみという慈悲を持っていた五代の心を投影していたのかもしれない……。

互いにボロボロになっても、延々と続く暴力の応酬。

掴みかかって馬乗りになった五代は、人間の姿をしたダグバを何発と殴り続けます。

顔をぐしゃぐしゃにし、涙をこぼして、大嫌いな暴力を何発も……。

一条刑事の耳にはもう、二人の声は聞こえない。

戦いは、終焉したのだ。

吹雪の中、二人の姿は見えない。

一条刑事は、大きく叫んだ。

「五代っ!!!!」

――……。

季節は、春。

人々を恐怖に震わせた怪物の姿は無くなり、世の中には平和が訪れた。

いじめ、パワハラ、人の犯罪……世知辛い現実はまだまだたくさんあるが、無差別に人が亡くなっていた以前よりはマシだ。

一条刑事含め、まわりの人間たちは幸せそうに笑顔を浮かべている。

五代がクウガとなり、ずっと守ろうとした笑顔だ。

もう、その笑顔が怪物の手によって曇ることなどない。

後は、人間同士の問題だけ。

ただ、そこに彼の姿は無い。

ずっと周りを笑顔にしてきた、彼の姿は。

一条刑事は、空を見上げます。

綺麗な、とても綺麗な青空を。

五代の保護者代わりである、おやっさんが呟きました。

「あいつ……空が好きだったから」

君を連れて行こう。

悲しみの無い世界まで。

君がくれた笑顔だけポケットにしまって。

僕は、青空になる。

君を連れて行こう。

争いの無い未来まで。

君がくれた思い出をアルバムに残して。

僕は、僕は、青空になる。

外国の海岸で、笑顔を振りまいてサムズアップをする一人の青年が見えます。

それが五代を取り巻く人々の想像だったのか、一条刑事の夢だったのか、それとも現実だったのかは分からない。

ただ、五代雄介がこの世界のどこかで生きているとするならば、きっと……。

結局、五代雄介はどうなったの?戦い続けた理由は?

 

このブログのロゴを見ての通り、僕は特撮オタクでありクウガ信者です。

15年後を描いた小説版では五代雄介が生きていたことも知っています。

ですが、僕個人の解釈としましては、五代雄介が一条刑事たちの前に再び現れることは無いと思っています。

クウガの脚本を書いた『荒川稔久』氏も最終回については、五代が命を落とすのはあまり残酷だと出演者に批判されたため、妥協の末に結末をぼやかすことにした風な旨をドキュメンタリーで述べていました。

ここからは僕の持論となりますが。

クウガという作品の大きなテーマの一つとして、『暴力を阻止するためにふるう暴力は許されていいのか?』というのがある。

もしこれが許されるのであれば、それはただの勧善懲悪だ。

暴力を暗黙の了解で肯定しまうことは、考えることの放棄である。

少なくとも、主人公「五代雄介」が信じる人間の在り方は、そうではない。

つまり、このテーマを掲げるのであればクウガという作品の中で暴力をふるった者たちは、皆それぞれ相応の罪を負わなければならない。

クウガに倒された敵しかり、犯罪を犯した人間しかり、人を守るためとはいえ、暴力をふるってしまった五代雄介しかり……。

残酷だが、「五代雄介の死」という結末で初めてこのテーマは成立するのだ。

ここで五代が幸せになってしまっては、すべてが嘘になってしまう。

正義と言う名の『暴力』を否定するのであれば、どう転ぼうとも五代が幸せになってはならないのだと思う。

ここまでの自己犠牲を成し得て、初めて人ひとりの人生を守れる。

そんな裏テーマが隠されているような気がしてならない。

以上のことから僕がクウガという作品から学んだのは、

「悪を懲らしめる必要悪も、決して許されるものではない」ということ。

「悪い奴、残忍なやつはとことんまで残酷」だということ。

「考えること、悩むことは大切」だということです。

このクウガという作品、五代雄介という主人公はうつ病で引きこもりだった当時の僕を救ってくれた、まさに人生の恩人ともいえる非常に思い出深い作品なんです。

仮面ライダーだからなどという偏見を払拭し、見てないひとはぜひとも見てほしいなぁ……そして物語の本質をしっかりと理解してほしい。

何度も見直しても色々なことを考えさせられる、ほんとに不思議なドラマでした。

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